●短編読み物『今日もファントは空を飛ぶ』  太陽きらめく空の下、子供大泣母オロオロ。一体何があったやら。 どうやらそうなる原因は、枝にかかって取れなくなった、赤い風船にあるようだ。  子供は「取って!」と母に言う。 だけれど母には遠すぎる。 太陽キラメく空の下、そんなやりとり続いてた。  そこへ突然、象耳少年、耳をパタパタ空を飛び、二人の元へやって来た。 彼は象耳ファント君。  ファントは木の方飛んでって、赤い風船捕まえて、フワリと地面に着地した。 あんなに泣いてた男の子、風船受け取り泣きやんで、笑顔いっぱいに「ありがとう!」 母もペコペコありがとう。 ファントはいっぱい感謝され、謙虚に「いえいえ」テレ隠し。  そんな彼を妬む顔。柱のカゲから妬む顔。 その人そこから歩み出て、ファントはそれに気がついた。 (あれは猫耳ミーコちゃん…。キラワレ者で有名だ…) それでもファントはつくろって、挨拶しようと駈け寄った。 「おはよう猫耳ミーコちゃん!今日も青空いい天気!」 猫耳少女のミーコちゃん、それを無視をして通り過ぎ、子供の方へ歩み寄る。 すると風船無理矢理取り上げて、たくさん持ってた風船と、一緒に空に飛んでった。 空の彼方へ飛んでった。  突然起こった出来事に、しばらく呆然、しばしの間。 だけれど子供が泣き出して、困った空気が流れ出す。 ファントはそれをチラリと見、青い空に目をやった。 (ミーコはあんなに空遠く…。いくら僕でも間に合わない…) 風船は遥か遠い空。子供の泣き声増すばかり。  困った顔のままだけど、ファントはついに決意して、泣く子の両肩掴んでは、 「必ず取って戻って来るよ!」 そう言い、空へと飛んでった。                          (追い着くこと、できるかな…) ファントの不安は増すばかり。 (それでも僕がやらないと…!) 自分自身に言い聞かせ、今日もファントは空を飛ぶ。 (僕が風船取り返し、そして誉めてもらうんだ)  すると突然後ろから、大きな鳥の体当たり。 あららゴツンとぶつけられ、ファントは一気に加速した。  白い雲たちすり抜けて、遠くの人影、ミーコちゃん。 それにどんどん近づいて、ミーコの顔も近づいて、二人の距離は1センチ。 ファントはギリギリ立ち止まる。危うく顔面ごっつんこ。 (やった!なんとか追いついた) 少し間に距離を取り、冷や汗を片手でぬぐい取る。 ミーコは無言でそれ眺め、風船片手に空の中。 「その風船を返してよ!」 ミーコは無視してそっぽむく。  そこでファントは考えた。 だったらハサミで風船の、糸を切ろうと思いつく。 ハサミをチャキンと取り出して、ファントは特攻準備した。  だけれどそこで気がついた。 (風船取ったらミーコが落ちる、そしたら僕は人殺し…) それはダメだと悩みだし、悩んで悩んでとにかく悩んで、違う方法思いつく。 (ミーコの事はほっといて、同じ風船買いに行こう) そうしようと決意して、くるりとミーコに背を向けて、風船屋さんに着地した。  子供が持ってた赤風船、それと同じの買ってきて、ファントは子供に手渡した。 「取ってきたよ」と手渡した。 だけれど子供は泣き出して、「僕のじゃない!」と、悲しんだ。 (やっぱり取り返してこよう…)  気まずい気持ちになりながら、ファントは飛び立つ準備した。 だけれど母親、それを止め、お礼を言って去ってった。 迷惑そうな顔をして、お礼を言って去ってった。 (良いことをしたハズなのに…) ファントの心はキズ付いた。  次の日に学校は、「ミーコが居ない」と騒いでた。  キラワレ者で有名な、猫耳少女のミーコちゃん。 居なくなって喜んで、騒ぐ人もいるけれど、女子の殆ど集まって、心配そうに話してた。  そこでファントは昨日の事、みんなに説明してあげた。 男子は全員それを聞き、笑い転げていたけれど、女子のみんなは怒ってた。 「ミーコはキラワレ者だけど、あなたのやった事もヒドイ!」 ミーコはきっと降りられず、空の上で困ってる。 女子はみんなでそう言って、ファントをとても困らせた。  生まれて初めてブーイング。 あんなに笑った男子さえ、黙ってそれを見つめてた。 非難の声は増すばかり。 (いつもはみんな嫌うのに、どうして今は保護するの?) ファントは疑問でしょうがない。 そしてとてもキズ付いた。  いっぱい困ってキズ付いて、ファントはついに腹立てた。 「助けに行けばいいんだろっ!!」 大きな声を張り上げて、窓から外に飛び出した。 (誰も感謝しないなら、二度と親切するもんか!)  ファントは宛なく空飛んだ。 (ミーコの事も助けない。困った人も無視しよう) 怒りはまだまだ治まらない。  しばらく空を飛んでると、雲が太陽隠しだし、雨がザーザー降ってきた。 ついでに風も吹き始め、街は台風に包まれた。  ファントはそれでも気にもせずに、まだまだ空を飛んでいた。 洗濯物が宙を舞い、脇をかすめて通っても、気にせず空を飛んでいた。 荷物を風に飛ばされて、追いかける人が見えてても、気にせず空を飛んでいた。 川の水が溢れ出し、流される人を見つけても、やっぱり空を飛んでいた。 町の被害に目も向けず、ファントは空を飛んでいた。 怒りも治まる気配がない。  それから少し経過して、雨はだんだん治まって、太陽がまた顔出した。 晴れた天気が照らす町、だけどとっても荒れ模様。  そろそろ疲れてきたファント。降りて歩く事にした。 煉瓦や草木で散らかって、地面は歩き難かった。  しぶとく立ってる木が一本。 そこに、割れた風船と、ミーコが共に掛かってた。 ミーコは必死にもがくけど、そこから抜け出す気配はない。  ファントの怒りはまだ止まず、そんなミーコを見つけると、煉瓦を一つ手に取った。 そしてそれを思い切り、ミーコ目掛けて投げつけた。  煉瓦は勢いよく飛んだ。 だけれど力み過ぎたため、ミーコに当たらず木に当たり、枝がボキリと折れだした。 同時にミーコは落下して、地面に一気に急降下。 だけれど猫耳ミーコちゃん。華麗に空中一回転。 スタリと無事に着地した。  ファントのおかげで助かった。 ミーコは少し間をおいて、照れくさそうに近づいて、 「ありがとう…」言い残し、ササッとどこかへ駆けてった。  静かな時間が流れてた。  あんなに腹が立ったのに、今度はたくさん泣き出した。 なかなか涙が止まらない。 (助けるつもりなかったのに、ありがとうって言ってった…) 今までたくさん聞いたけど、こんなに嬉しくなったのは、初めて感じた事だった。  次の日の朝になり、ファントは元に戻ってた。  太陽キラメく空の下、子供が一人泣いている。一体何があったやら。 どうやらそうなる原因は、枝に掛かって取れなくなった赤い風船にあるようだ。  ファントはそれを見つけては、バサリと耳で空を飛び、掛かった風船を捕まえた。 そして見事に着地して、子供に渡そうとした瞬間、突然大きな風吹いた。 それに飛ばされ風船が、青い空へと飛んでいく。 ファントも飛ぼうとしたけれど、誰かが高くジャンプして、風船捕まえ着地した。 それは、猫耳ミーコちゃん。  照れくさそうに風船を、子供の手の中押しやると、お礼も聞かずに去ってった。 ファントはそれ見て微笑むと、ミーコの背中を追いかけた。 そして横に並んでは、「ありがとう」と声かけた。  おわる。